親の介護で仕事を辞める前に知っておくべきこと!退職後の生活費は?

この記事は、以下のような方にオススメです。

  • 親の介護で退職しようかどうか迷っている
  • 仕事を辞めた後の生活費について教えてほしい
  • 退職せずに、介護を両立できる方法や事例を知りたい

介護によって退職するのは、人生設計に大きく影響する決断です。
そのため、退職前に制度を知って、きちんと用意する必要があります。

この記事では、「介護で仕事を辞めるリスク」や「退職前に知っておくべきこと」について分かりやすく解説します。

介護と両立して仕事を続ける方法も具体的に紹介していますので、ぜひご覧ください。

目次

親の介護で退職すると生活はどうなる?

1度でも、親の介護で退職すると、想像以上に生活が大きく変化します。

特に経済面では、収入が途絶えるため、貯金を切り崩す生活になりやすいです。
その結果、介護が長引くにつれて精神的なストレスが増えてしまうリスクがあります。

また、出費を抑えるために「介護サービスを利用せず、自分で介護しよう」と抱え込んでしまうケースも珍しくありません。
1人で介護を抱え込むと、仕事をしていたとき以上に、身体的・精神的な負担が増えてしまうこともデメリットです。

さらなる問題点として、希望の条件で復職するのが難しくなる点もリスクだと言えます。

このようなリスクを整理した上で、退職するかどうかを慎重に判断しましょう。

むしろ介護の負担は増える

退職して仕事がなくなると、全体的な負担が減ると考えがちですが、実際には負担が増えることが少なくありません。
仕事を辞めて介護できる時間が増えた分、家族の期待や本人の責任感が強まってしまうためです。

実際に、2022年に厚生労働省が発表したデータでは、仕事を辞めた後に「負担が増した」と答える割合が高くなっています。
具体的には、精神面では66.2%、肉体面では63.2%、67.6%の方が「負担が増した」という回答結果です。

仕事をしているときは、日中の介護を外部のサービスに任せられるケースも多いでしょう。
しかし、退職すると「自分がしなければ」という意識が高まり、外部のサービスを減らしてしまうのです。

その結果、介護を一人で抱え込むことになり、負担が増したと感じる結果となってしまいます。

生活費の収支が不安定になる

当然ではありますが、仕事を辞めると収入が途絶えてしまいます。
特に40代から50代の働き盛りの世代が退職した場合は、退職金や老後の年金への影響も見逃せません。

そして、毎月の医療品や介護用品、介護サービスの費用が必要になります。
場合によっては、住宅のバリアフリー化や介護施設の初期費用など、まとまった支出も発生するでしょう。

収入がない状態では「貯金が尽きないように、できるだけ出費を抑えなきゃ」という考えになりやすいです。
しかし、介護サービスの利用を減らすと介護者の負担は増し、「退職しなければ良かった」と後悔する結果になります。

このため、介護が長引く可能性を考えると、安易に収入源を無くすのは危険な判断です。

正規雇用で再就職するのは難しい

親の介護を理由に退職した後に、正規雇用として再就職するのは簡単ではありません。

多くの企業は、ブランク期間を懸念し、正規雇用として採用するのは慎重になります。
本人としても、介護のスケジュールに左右されるため、フルタイムでの勤務が難しいのです。

実際に、2019年に内閣府が発表したデータでは、介護で退職した人が再就職した割合は3割というデータもあります。

再就職が進まない理由は、以下のようなものです。

  • 介護と仕事を両立できる職場が見つからない
  • 介護する家族が自分しかいない
  • 自分が仕事自体をしたいと思わない

ここから、1度でも仕事を退職してしまうと、社会的にも精神的にも再就職しにくい現状がうかがえます。

介護で退職する前に考えておくべきこと

親の介護で退職するとき、事前の準備がないままに決断してしまうと、後悔しやすいです。

「もし、どうしても介護のために退職しなければいけない」という場合、以下の3点はあらかじめ考えておきましょう。

  • 介護期間の見通しを立てる
  • 現在の貯蓄と生活費を見直す
  • 家族で介護について話し合う

介護での退職には、負担が増えたり生活費が不安定になったりというリスクがあります。
リスクを最小限に抑えるために、上記の3点について考えることが大切です。

あらかじめ備えておくことで、退職後の介護をスムーズかつストレスなく進めることができます。

介護期間の見通しを立てる

退職を決断する前に、親の介護がどれほどの期間必要になるのか、できる限り現実的な見通しを立てることが重要です。

介護は短期間で終わる場合もあれば、数年から十年以上続くこともあります。
この期間を見極めることで、適切な選択肢を選びやすくなるのです。

介護期間の見通しを立てる際は、地域包括支援センターで相談するのが良いでしょう。

親の健康状態や要介護度を正確に把握し、進行する可能性のある症状や必要な介護内容を予測します。
特に、認知症などの場合は、必要な介護が徐々に変化するため、その段階に応じた対応も考慮するとより正確です。

介護期間の見通しが立つと、退職後の計画を具体的に想像しやすくなり、不安を軽減できます。

現在の貯蓄と生活費を見直す

退職後は収入が途絶えるため、日々の生活を主に貯金からやりくりする必要があります。

ここでは、介護期間別に「生活費はどれくらい必要か?」のシュミレーションを行ってみましょう。

まず、成人一人当たりの生活費は約10万円と考えます。

根拠は、「二人以上の世帯」の1世帯あたりの消費支出は287,963円​であり、世帯人員の平均は2.88人であるためです。
1世帯あたりの消費支出(287,963円)を世帯人員(2.88人)で割ると、99,987円となります。

出典:統計局「家計調査報告(二人以上の世帯)-2024年(令和6年)9月分-」より

次に、在宅介護にかかる費用は、平均で約4.8万円です。

出典:(公財)生命保険文化センター「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」より

これらの数字を参考にして、ケース別にシュミレーションを行います。

ケース1:母親と2人で同居して、母親を介護する場合
「生活費(10万円×2)」+「在宅介護費用(4.8万円)」=24.8万円 / 月

ケース2:父親と夫婦の3人で同居し、父親を介護する場合
「生活費(10万円×3)」+「在宅介護費用(4.8万円)」=34.8万円 / 月

ケース3:両親と夫婦の4人で同居し、両親を介護する場合
「生活費(10万円×4)」+「在宅介護費用(9.6万円)」=49.6万円 / 月

なお、上記の生活費は例であり、地域差や要介護度などによって異なる場合があります。

生活費は、介護施設の初期費用など一時的に大きな出費が発生する可能性に備えて、余裕を持っておくことが重要です。

家族で介護について話し合う

あなたが退職して1人で介護に専念する場合でも、家族と目線を揃えておくことは大切です。

親の介護は家族全体に関わるため、1人ですべて背負い込もうとせず、まずは話してみましょう。
たとえば「お金は誰が出すか?」「施設に預けるのか?」ということについて、家族間で意見を揃えておく必要があります。

もし全員の意見が一致していないまま決断すると、後からトラブルになりかねません。
それぞれの収入や生活場所、仕事の状況によって介護の役割を分担できると理想的です。

事前に話しておくことで、退職したからといって、あなただけに負担が増える事態も防げるでしょう。

親の介護で仕事を辞めたくない場合は?

「介護は大変だけれど、できるだけ仕事を続けたい」という方は多くいます。
そして、介護と仕事を両立するための方法は、すでに用意されているのです。

ここからは、仕事を辞めずに介護を行う3つの方法を紹介します。

  • 介護を理由に仕事を休める制度を利用する
  • 地域包括支援センターで介護の相談をする
  • サービスを活用して介護の負担を減らす

仕事を休める制度や介護を楽にする方法を知って、できるだけ退職せずに介護を続けましょう。

介護を理由に仕事を休める制度を利用する

意外と知られていませんが、介護のために仕事を休める制度が用意されています。
法律で整備されている制度ですので、原則として企業側が拒否することはできません。

以下の制度を上手く活用することで、退職せずとも介護と両立しやすくなります。

  • 介護休業制度:通算93日間の長期休業制度(休業中は給与の約67%を受給可能)
  • 介護休暇制度:年間5日間まで、一時的な介護に対応できる短期休暇制度
  • 勤務時間変更:短時間勤務やフレックスタイムで柔軟に働ける制度

これらの制度では、対象者となる条件や手続き方法がそれぞれ定められています。
そのため、介護の休職制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

地域包括支援センターで介護の相談をする

親の介護について困ったときは、お近くの地域包括支援センターに相談するのがオススメです。

地域包括支援センターとは、市区町村が運営する無料の相談窓口です。
介護について幅広く支援しており、たとえば適切な介護サービスの紹介などが期待できます。

「いきなり介護が始まったけれど、どうして良いか分からない」という抽象的な相談も可能です。
1人で抱え込んで「退職するしかない」と決断する前に、専門家から情報収集しましょう。

あなたの置かれている状況を相談することで、最適な介護のやり方を提案してくれるはずです。

サービスを活用して介護の負担を減らす

3つ目の選択肢として、介護を楽にするサービスを活用する方法があります。

介護の中でも、オムツ交換や認知症の見守りは特に大変ですよね。
しかし、これらの介護を楽にできるサービスが、実はすでに販売されています。

たとえば、ベッドに敷くだけで「いつ尿が出るか」を把握できるシートがあるのです。
これを使えば、ベッド上で漏らす心配がなく、オムツ交換を劇的に楽にできます。

また、「認知症の親が知らない間に、倒れていたらどうしよう…」と心配かもしれません。
その心配も、親に異変があったときだけ、介護者のスマホに通知してくれる見守りカメラで不安を軽減できます。

このようなサービスを活用すれば、安心して買い物に出かけることができるでしょう。

「ラクカイゴ」というWebサイトでは、介護を楽にする商品を100種類以上も掲載しています。
介護の悩みを選択するだけで、あなたの介護を楽にする商品を見つけられますので、ぜひ試してみてください。
介護を楽にする「ラクカイゴ」の公式ページはこちら

介護と退職に関するエピソード

最後に、親の介護と退職に関する事例を3つご紹介します。

  • 祖母の介護で退職を決意した事例
  • 退職後の生活費を上手く抑えた事例
  • 退職せずに看病の時間を捻出できた事例

具体的なエピソードをから、制度の活用方法や退職の判断基準などを参考にしてください。

祖母の介護で退職を決意した事例

Aさんの母親は転倒事故がきっかけで要介護2に認定され、一人では日常生活ができない状態です。
そのため、40代のAさんは長年勤めてきた会社で管理職として働きながらも、夜には一人暮らしの母親の面倒を見に行く生活をしていました。

当初は訪問介護やデイサービスで対応していましたが、認知症が進行し、夜間の徘徊や昼夜逆転の生活が始まったのです。

しかし、Aさんは職場で重要なプロジェクトを管理している立場上、簡単には仕事を休めませんでした。
さらに、祖母が施設へ入ることを拒否したため、自宅で介護するしかなくなってしまいます。

その結果、Aさんは疲労が限界に達してしまい、退職するしかないと決断してしまったのです。
そうして、収入が途絶えた中で貯蓄を切り崩す日々が始まり、時間があるためにゴミ出しまで求められるようになりました。

この経験からAさんは、「退職する前に、きちんと制度や介護サービスを調べておけば良かった」と後悔しています。

他の家族に相談したり、見守りカメラなどで介護の負担を減らしたりすることの重要さが分かる事例です。

退職後の生活費を上手く抑えた事例

50代のBさんは、親元を離れて都内で会社員として働いていました。

あるとき、85歳の母親が要介護3の認定を受けたため、介護施設の利用を検討します。
しかし、母親が在宅介護を強く望んだことから、Bさんは退職する決断をして、田舎の実家に戻ることにしました。

退職後の大きな課題は、生活費をどのように捻出するかです。

Bさんは、まず母親の年金収入を基に、食費や光熱費の見直しを行いました。
また、地域包括支援センターを通じてケアマネジャーと相談し、必要最低限の福祉用具をレンタルしたのです。

その後、母親の自宅を活用してリースバックを実施し、まとまった資金を確保しました。
この資金を基に、介護サービスを組み合わせることで、負担を軽減しながら介護を続けるように整えます。

そして、生活費を補填するために、浮いた時間でパートタイムとして働くようにしたのでした。

このように、負担を減らしながら、生活費の収支を合わせることで、ストレスの少ない状態で介護を継続できるでしょう。

退職せずに看病の時間を捻出できた事例

30代のCさんは、フルタイムで働きながら、同居する父親の介護をしていました。

父親は、要介護2と診断されており、食事の準備や服薬管理、日中の見守りが必要です。
当初は退職を検討したものの、若くしてキャリアを諦めたくないという思いから、介護と仕事を両立する方法を探しました。

Cさんは、まず勤務先に相談して介護休暇制度を利用し、父親のケアプランを整えたのです。
そして、日中はデイサービスに預けることで、介護の負担を軽減しました。

さらに、職場ではフレックスタイム制度の利用を申請し、朝と夕方の介護時間を確保します。
万が一、父親に大きな病気などが見つかったときのために、介護休業制度の枠は残しておく判断です。

このように制度を活用したことで、退職せずとも介護と仕事を両立させることができました。

【まとめ】介護で仕事を辞めるのはリスクが大きい

この記事では、介護で仕事を辞めるリスクや、退職前に考えておくべきことを紹介しました。

親の介護で退職すると、以下のように後悔する可能性が高いです。

  • むしろ介護の負担は増える
  • 生活費の収支が不安定になる
  • 正規雇用で再就職するのは難しい

退職のリスクを冷静に判断するため、退職前に以下の3点は考えておきましょう。

  • 介護期間の見通しを立てる
  • 現在の貯蓄と生活費を見直す
  • 家族で介護について話し合う

実際には、退職せずとも介護と仕事を両立できる解決方法があります。

  • 介護を理由に仕事を休める制度を利用する
  • 地域包括支援センターで介護の相談をする
  • サービスを活用して介護の負担を減らす

一度でも、介護で退職してしまうと、その後の生活は厳しくなる傾向があります。
できる限り介護と仕事を両立できるよう、この記事で紹介した3つの解決方法を試してみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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