【2024年改定対応】生活機能向上連携加算とは?算定要件などを解説

この記事は、以下のような方におすすめです。

  • 通所介護の生活機能向上連携加算の概要を知りたい
  • 算定要件や必要な書類について知りたい
  • 算定のメリットや注意点を知りたい

機能訓練をより効果的に実施するためには、生活機能向上連携加算が重要だと聞いたことがあるものの、「どのような加算なのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。

今回は、生活機能向上連携加算について、通所介護での算定要件や必要な書類、算定のメリットや注意点を詳しく解説します。

目次

生活機能向上連携加算とは?

生活機能向上連携加算とは、外部のリハビリ専門職や医師(以下、理学療法士等)と共同でアセスメントを行い、その結果をもとに機能訓練計画を作成することで算定できる加算です。

この加算の目的は、自立支援と重度化防止を目指し、多くの事業所で質の高い機能訓練を提供できるようにすることです。

しかし、2019年10月のデータによると、算定可能な介護サービスは多岐にわたるものの、通所介護の算定率は3.4%、全事業所の平均算定率はわずか3.1%にとどまっています。

算定率が低い主な理由として、以下のような課題が指摘されています。

  • 外部のリハビリ事業所との連携が難しい
  • かかるコスト・手間に対して単位数が見合わない
  • 加算を適用すべき利用者がいない

2021年の介護報酬改定以前は、ICTを活用した算定が訪問介護に限られていましたが、同改定により、訪問なしで算定できる区分が多くの介護サービスに拡大されました。
なお、2024年の改定では、算定要件に変更はありません。

算定対象となるサービス

生活機能向上連携加算は、以下の介護サービスで算定できます。
種類、区分・単位数は次の通りです。

スクロールできます
介護サービスの種類区分・単位数
・訪問介護(Ⅰ):100単位/月
(Ⅱ):200単位/月
・小規模多機能型居宅介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・認知症対応型共同生活介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護
・通所介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・介護予防認知症対応型通所介護
(Ⅰ):100単位/月
(Ⅱ):200単位/月

(Ⅱ)は個別機能訓練加算を算定していると、100単位/月
・短期入所生活介護
・介護予防短期入所生活介護
・特定施設入居者生活介護
・介護予防特定施設入居者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・介護老人福祉施設
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
参考:厚生労働省 介護報酬の算定構造のイメージ(R6.6.1)

生活機能向上連携加算の算定要件

区分ごとの算定要件は、以下の通りです。

(Ⅰ)(Ⅱ)共通の要件
  • 助言をもとに、機能訓練指導員等(機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員など)が共同して個別機能訓練計画を作成する
  • 個別機能訓練計画に具体的な内容(利用者ごとの目標、実施時間、実施方法など)を記載する
  • 利用者の身体機能または生活機能の向上を目的とした機能訓練の項目を設定し、機能訓練指導員が適切に訓練を提供する
  • 評価結果をもとに、個別機能訓練計画の進捗を3か月ごとに1回以上見直し、利用者・家族に説明したうえで、必要に応じて訓練内容を見直す
(Ⅰ)の要件
  • 理学療法士等からICTの活用などにより助言を受け、個別機能訓練に関する計画を作成する
(Ⅱ)の要件
  • 理学療法士等が訪問し、機能訓練指導員等と共同して利用者の身体状況等を評価し、カンファレンスを実施する

【備考】

  • (Ⅰ)は、3か月に1回のみ算定できる
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 医療提供施設(病院の場合)は、病床数が200床未満、または当該病院から半径4km以内に診療所が存在しない場合に限る

加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の大きな違いは、理学療法士等の訪問の有無です。
生活機能向上連携加算を算定する際、ICT等を活用して助言を受けて計画を作成した場合は(Ⅰ)、理学療法士等が直接訪問して助言を受け、計画を作成した場合は(Ⅱ)を算定します。

以下では、それぞれの区分についてより詳しく見ていきましょう。

生活機能向上連携加算(Ⅰ)

加算(Ⅰ)では、理学療法士等に直接訪問してもらう必要はありません。

算定したい事業所は、以下いずれかの方法で助言を受け、計画書を作成します。
(具体的なステップも解説しています)

  • テレビ電話などのリアルタイムでの通話を活用した方法
    1. 1、機能訓練指導員等は利用者が通所介護を利用中に、理学療法士等とビデオ通話をする
    2. 2、理学療法士等がビデオ通話を通じて利用者の状態を把握し、機能訓練指導員等に助言する
    3. 3、機能訓練指導員等は助言をもとに個別機能訓練に関する計画書を作成する
  • あらかじめ撮影したデータを理学療法士等に提供する方法
    • 1、あらかじめ撮影方法や撮影内容を決める
    • 2、機能訓練指導員等は利用者が通所中に動画を撮影し、理学療法士等に提供する
    • 3、理学療法士等が動画を確認し、機能訓練指導員等に助言する
    • 4、機能訓練指導員等は助言をもとに個別機能訓練に関する計画書を作成する
  • リハビリテーションの場を活用した方法
    • 1、通所介護と併用している通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションの場で、利用者がリハビリを受ける
    • 2、その際、理学療法士等が利用者の状態を把握し機能訓練指導員等に助言する
    • 3、機能訓練指導員は助言をもとに、個別機能訓練に関する計画書を作成する

生活機能向上連携加算(Ⅱ)

加算(Ⅱ)は、理学療法士等が通所介護事業所を直接訪問したうえで身体状況等の評価、個別機能訓練計画の作成を行う必要があります。

その際、利用者に直接会わず、ICTを活用した動画などの確認のみで身体状況を評価する方法では加算(Ⅱ)の算定要件を満たしません。
たとえば、通所介護の利用日以外に理学療法士等が当該施設を訪問しても、利用者が不在だからといって、動画の確認だけで済ませることは認められません。

加算(Ⅱ)を算定する場合、理学療法士等は必ず利用者に直接会い、アセスメントを行う必要があります。
そのうえで、通所介護事業者は適切な助言を受けなければなりません。

生活機能向上連携加算の計画書

生活機能向上連携加算の計画書には所定の様式が定められていません。
代わりに、内容が網羅されている「個別機能訓練計画書(個別機能訓練加算を算定する際に必須の計画書)」を利用するとよいでしょう。

ただし、以下の内容については記載欄がないため、加えておく必要があります。

  • 共同で計画を立てた理学療法士の氏名と所属先
  • 理学療法士等から受けた助言内容

個別機能訓練加算やその計画書については、こちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください。

生活機能向上連携加算を算定するメリット

生活機能向上連携加算を算定するメリットは、主に以下の2点です。

  • 個別機能訓練の質が担保される
  • 地域での事業所間連携が図れる

以下で、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

個別機能訓練の質が担保される

生活機能向上連携加算を算定することで、各サービス事業者における個別機能訓練の質を担保できるというメリットがあります。

機能訓練指導員が訓練を実施していても、リハビリ専門職の視点がなければ、その内容が本当に効果的か判断できない場合があります。
しかし、理学療法士等の助言を活用すれば、科学的根拠にもとづいた機能訓練が可能となり、質の向上が期待できるでしょう。

また、科学的に有効とされる訓練内容であっても、長期間同じ方法を続けるだけでは、利用者の状態に適した内容から逸れる可能性があります。
その点、理学療法士等が定期的に訓練内容を見直すことで、継続的に質の高い訓練を提供できるメリットがあります。

地域での事業所間連携が図れる

2つ目に、地域の事業所間で連携を強化できる点がメリットです。

たとえば、通所リハビリテーションを利用していた方が、移行先として通所介護を選択するケースがあります。
しかし、利用者の中にはリハビリ専門職による訓練を継続したいと強く希望し、スムーズに移行できない場合もあります。

こうした場合、通所リハビリテーションの専門職が移行先の通所介護に助言できる仕組みを整えれば、利用者の不安を軽減できるだけでなく、事業所間の連携も強化できるでしょう。

もし、サービス移行後に利用者の状態が低下した場合でも、通所リハビリテーションを再利用する選択肢をもつことで、適切な支援を継続しやすくなります。

生活機能向上連携加算を算定する際の注意点

最後に、生活機能向上連携加算を算定する際の注意点を解説します。

  • 委託料の兼ね合いで採算が合わない場合もある
  • 別法人との連携には積極的に応じる必要がある

委託料の兼ね合いで採算が合わない場合もある

共同でアセスメントする際、助言をした理学療法士等の事業所には介護報酬が発生しません。
委託契約を結び、理学療法士等の事業所に対して業務にかかる委託費用を支払う必要があります。

委託費用は双方の合議により決定されますが、算定する事業所にとっては介護報酬の取り分から委託料を差し引くことで、ほとんど利益が出ないケースもあります。
そのため、業務負担ばかりが増えないように、費用の設定は慎重に行いましょう。

特に注意すべき点として、個別機能訓練加算を算定している場合、生活機能向上連携加算は(Ⅱ)のみの算定となり、単位数も200単位ではなく100単位になります。

また、理学療法士等の訪問が必須となるため、業務負担が増える一方で高い単位数が算定できず、委託費用によっては採算が合わなくなる可能性があります。

別法人との連携には積極的に応じる必要がある

生活機能向上連携加算は、同一法人内の事業所との連携でも算定できます。

しかし、以下の点を踏まえると、別法人との連携を意識することが重要です。

  • 地域包括ケアシステムの推進
  • リハビリ専門職の有効活用と地域連携の促進

生活機能向上連携加算は、地域包括ケアシステムの推進を目的としています。

特に、連携する医療提供施設は、「在宅医療の主たる担い手として想定されている200床未満の医療提供施設」に原則として限定されています。
また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門職を有効に活用し、地域全体の介護・医療サービスの質を向上させることも重要です。

こういった点から、連携先を同一法人内に限定せず、別法人との連携も積極的に進めていきましょう。

特に、他法人から連携の求めがあった場合には、地域全体のサービス向上の観点からも積極的に応じるのが望ましいといわれています。

まとめ

この記事では、通所介護の生活機能向上連携加算について解説しました。

主なポイントは以下の通りです。

  • 生活機能向上連携加算は、質の高い機能訓練を多くの事業所で実施できることを目的としている
  • 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は、理学療法士等の助言がICT等の活用で行われるか、事業所への直接の訪問で行われるかによって区分される
  • 質の高い訓練が可能になる一方で、業務負担や収益の面からも算定は慎重に進める必要がある

生活機能向上連携加算の算定に向けて準備を進めている方は、ぜひ参考にしてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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